商業出版したい人こそKindle出版してみよう
出版社から本を出したい人に向けてお届けしているこのシリーズ。今回はKindle出版がテーマです。
さくっとKindle出版が成功への近道
これまで何度もお伝えしてきたように、出版社から「本を出しませんか?」と声をかけられるためには「フォロワー1万人が基準のひとつ」です。
とはいえ、「よし、出版するために今日からフォロワー1万人を目指そう!」と思っても、達成するのはなかなか難しい。
「こうすればフォロワーが増える」というノウハウはあれど、フォロワー数は自分でコントロールできません。
それゆえ、どれくらい時間がかかるかもわからない。
そもそも前提として、出版できるかどうかは出版社が決めることであって、自分で決めることができません。
スピードが命ともいえる今の時代。
出版社から声がかかるのを待っていたら。
持ち込んだ企画が通るのを待っていたら。
数カ月、1年、数年は平気で経ってしまいます。
それなら、さくっとKindle出版してしまったほうが成功に近づけるのではないか、とわたしはそう思っています。
なぜか?
Kindle出版のメリットを挙げながら説明していきますね。
Kindle出版のメリット1:すぐに出版できる
Kindle出版とは、Amazonのセルフ出版サービス「Kindleダイレクト・パブリッシング」で電子書籍を出版することです。
すでにお伝えしましたが、今の時代は何に関しても「スピード」が肝となります。
めでたく商業出版が決定しても、平均的な製作期間は約6カ月。
なんだかんだで世に出るまでに1年近くかかってしまうことも多々あります。
しかし、すでに手持ちのコンテンツがある程度ある場合、Kindleなら思い立ったその日に出版することも可能です。
もちろん、1冊としてきちんとした内容になるよう作り込んだほうがいいとわたしは思います。
その場合、ある程度の製作期間が必要です。
ただ、ポテンシャルとして「すぐに出版できる」というのは、大きなメリットです。
旬なテーマを扱う場合は特にそうですね。
「出版のタイミング」がものを言うときって少なからずあります。
Kindle出版のメリット2:主導権を握れる
商業出版は出版社がお金を出して製作します。
そのため、基本的に出版社および編集者の意向に沿って作ることになります。
もちろんお互いの意見を擦り合わせて、最良のものを作っていくのが前提です。
とはいえ、意見が食い違ったとき、なんだかんだで出版社の意見が強く反映されてしまうことが多いんですよね。
企画の方向性、スタッフの選定、デザインの方向性、出版時期、タイトル、価格、初版部数、印税……。
すでに何冊もベストセラーを出している著名な方であればまた違いますが、はじめて商業出版をする人の場合、すべて出版社主導で決まることが多いと思います。
編集者と相談しつつ執筆を進めて、完成間近だったのに上司の鶴のひと声で全面的に書き直し、なんてことも起こります。
お金を出す側っていうのはね、強いんですよね……(遠い目)。
ただ、本は著者さんの名刺代わりになるとっても重要なもの。特に、最初の本の売れ行きは、その後も出版できるかどうかにかなり大きな影響を及ぼします。
なので「これはちょっと……受け入れがたい!」と思うことがあれば、はっきり伝えたほうがいいと個人的には思います。
遠慮する必要はありません。どうか強い心で!
いずれにしても、すべてにおいて自分が主導権を握れるというのは、こだわりが強くて「全部自分の思い通りにしたい」人ほどメリットを感じるのではないでしょうか。
Kindle出版のメリット3:印税率が高い
商業出版で本を出した場合の印税って、どれくらいだと思いますか?
あくまでわたしの経験からいえることですが、以下が目安になるでしょうか。
結構な売れっ子で印税10%
本を出したことがあって、ある程度売れる冊数が見込める人で8%
はじめて本を出す人の場合5〜6%ということも
印税についてご存じない方のために簡単に説明しますと、印税というのは本の価格×印税率=1冊売れると支払われる金額です。
つまり、1,500円の本を出した場合、1冊売れたら売れっ子で150円(印税10%)、はじめて本を出す人は半分の75円(印税5%)が懐に入ります。
「1冊あたりに支払われる金額」に「部数」を掛けると、支払われる印税の総額になります。
この「部数」の設定の仕方もさまざまです。
初回印税の支払いは初版の「刷り部数」を基準に計算する場合と「印税保証部数(刷り部数より少ない)」を基準に計算する場合など、いろいろあります。
たとえば、初版部数が5,000部でも、出版後に支払われるのは3,000部(保証部数)分だけで、「あとは実際に売れた分だけ後払いします。半年後に計算してご連絡しますね」ということもあります。
ちなみに、実売数が保証部数を上回らない限り、後の支払いは永遠に生まれません。
ちょっとわかりにくくなってきましたね。
うーん、よくわからないわって方は計算後の金額だけ見ながらお付き合いください。
つまり、1,500円の本を出す場合。
印税5%で初版分の印税保証部数が3,000部だと、75(円/1冊あたり)×3,000(部)=225,000円が発売後に振り込まれる印税の金額になります。
結構厳しめな印象ですが、今はこれくらいが普通なのかもしれません。
半年間苦労に苦労を重ね、体力・気力を使い果たし、その分他の仕事に手が回らないことだってあると思います。
そんなこんなも含めて、この金額は妥当なのかどうか。
人によって感じ方はさまざまだと思います。
もちろん、売れて重版すればするほど、収入は増えていくのですが。
ひるがえってKindle出版の場合。
値段を自分で設定できますので、1冊売れたときの金額(本の価格×ロイヤリティ オプション<印税>)は自分で調整できます。
250円以上に設定すると、印税70%(KDPセレクトに登録する必要あり)
250円未満に設定すると、印税35%
Kindle本は紙の書籍よりも高い価格にしにくいというのはありますが、「自分で設定できる」というのは大きいですよね。
あと、単純に印税率が高い。
ちなみにKindle Unlimitedで販売した分は、また違う計算になります。
もしかしたら、売れている著者さんほど、収入面ではKindle出版のほうがメリットが大きいかもしれませんね。
(長くなってきてちょっとお疲れでしょうか。よろしければお茶どうぞ)
Kindle出版のメリット4:文字数が少なくても形になる
通常、紙の書籍の場合は、文字主体の読み物であれば200ページ前後は少なくとも必要です。
ある程度の値段をつける必要があるため、それくらいページ数がないと価格と見合わないからです。
そのため、紙の書籍(読み物)の場合、必要な文字数は約10万字。
10万字も書くとなると、かなり骨が折れると思います(書いたことありませんが)。
体力と気力を総動員して、それこそ身を削る思いで書かないと、ここまでの文字数にはならないのでは(あくまで想像ですが)。
特に書き下ろしの場合は大変です。
それに比べて、Kindle出版の場合は1万字ちょっとあれば一応形になります。
ちなみに、わたしが書いているこのシリーズ、今回の分を含めると1万字くらいになるので、Kindle本にして出そうと思えば出せます(いつか出そうかな。何事も経験)。
もちろん、もっと文字数を増やして内容を充実させることができるのであれば、それに越したことはありません。
でも、紙の書籍の10分の1の文字数で出版できるというのは、かかる労力や出版までのスピードという面でも大きなメリットではないでしょうか。
Kindle出版のメリット5:リスクなしで商業出版の擬似体験ができる
わたしが推したいのはこれです、これ。
商業出版の擬似体験ができる。しかも、リスクなしで挑戦できる。
1万字ちょっとでいいとはいえ、ひとつのテーマを設定し、全体の流れを考えて構成を練る必要があります。
タイトルやコピー、表紙をどうするかを考える必要があります。
価格はどれくらいが妥当かな? といろんな面から検討して決定する必要があります。
それらの経験ができることに加え、実際の売れ行きデータを入手することができるので、反応をダイレクトに感じることができます。
それから、Kindle本としてまとめていく過程で、いろいろな気づきを得ることができる。これも大きいです。
そもそも書こうとしてみたら、自分の中にきちんとコンテンツが確立されていなかったと気づくことだってあると思います。
また、自分の発信分野がすごくニッチで、Kindle出版のほうが読者のニーズにダイレクトに応えられるので適していたと気づくことだってあるかもしれません。
どんな気づきであれ、やってみなければわからなかったこと。トライした価値は大きいです。
しかも、すべての作業を自分で行えば、出版までにかかる金額は「0円」です。
Kindle出版が次につながる(かも)
ひとつ可能性として考えられるのが、Kindle出版で話題になれば、Webメディアの連載の可能性が高まるということです。
「Kindle本を出している=まとまった文章が書ける人」と認識されます。そのため「Webメディアでの露出が増える→出版社の編集者の目に留まる」という可能性もゼロではありません。
ひとつのステップとしてトライしてみる価値はあるのではないでしょうか。
その後、もし商業出版の機会を得ることができたら、Kindle出版での経験を生かすこともできます。
Kindle出版を全面的にすすめる内容になってしまいましたが、もちろん商業出版のメリットもあります。
そのあたりは、また次回。