あなたの本は書店のどの棚に置かれるか
「出版社から本を出したい!」という人に向けて書いているこちらのシリーズ。本日第3弾です。
今回は、「コンテンツ力を高めるためにできること」がテーマです。
出したい本のイメージ、持っていますか?
「本を出したい」という方は、書店に並ぶ自分の本のイメージをどれくらい詳細まで思い描いているでしょうか?
テーマは?
タイトルは?
ビジュアルメイン? それとも読み物?
装丁は?
本文の色数は? カラー? モノクロ?
ページ数は?
上記の質問にすぐに答えられるでしょうか?
ちょっと話がそれますが、かなえたい夢、達成したい目標は「なるべく具体的に思い描け」といわれますよね。
なぜなら、ゴールが明確になっていないと、どこに向かって走ればいいかわからないからです。
当たり前といえば当たり前なのですが、案外ゴールが定まらないままあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、ふらふらしてしまうことって多いですよね。わたし自身もそうです。
もちろん、寄り道することによって得られるものもあります。でも、どうしても時間がかるし、無駄も多くなる。
最短ルートでゴールに近づきたいのなら「ゴールを定め、鮮明に思い描くこと」。これが鉄則といわれます。
本についても同じです。
あなた自身が出版したい本をどれくらい具体的にイメージできているか?
これがキーポイントとなります。
書店の「どの棚に並ぶか」をイメージしてみる
実は、出したい本の具体的なイメージを持つために、手っ取り早くて効果的な方法があります。
それは、書店に行って自分の本が「どの棚に並ぶのか」をイメージすること。
皆さんご存じのとおり、書店はジャンルごとに書棚がわかれています。
ビジネス書ならビジネス書、自己啓発書はビジネス書の棚やその近くにありますね。
料理やインテリア、メイクなどの美容系であれば実用の棚にあり、隣り合っていることが多いです。
では、あなたの本は、どの棚に並ぶでしょうか? 「そういえばそんな風に考えたことがなかった!」という方も多いのではないでしょうか。
たとえば、あなたが書きたい本のテーマが「片づけ」だったとします。その場合、書店のどの棚に置かれると思いますか?
実は「片づけ」ひとつ取ってもジャンルはさまざま。
「片づけ」という球を、どの方向にバットで打ち、ヒットを狙うか。
それによって、書店で置かれる棚も変わってきます。
「片づけ」がテーマの3つの書籍企画案を考えてみました。それぞれどの棚に置かれるか見ていきましょう。
【企画1】「片づけで『自分でできる』子を育てる」→ 子育ての棚
【企画2】「片づけで人生を幸せにする教科書」→ 自己啓発書の棚(こんまりさんの本と同じテーマですね)
【企画3】「無印良品ですっきり片づいた暮らし」→ インテリアなど実用の棚
このように、同じ「片づけ」がテーマだったとしても、内容によって書店の棚も違ってくるのです。
そして、書店で置かれる棚が違うと、本の作り方も変わってきます。書店で置かれる棚によって、本の大きさや形、ページ数などの体裁がある程度決まってくるのです。
ですから、「自分の本は書店のこの棚に並ぶんだ!」とイメージできたということは、判型やページ数など、具体的な体裁もある程度定まるということです。
テーマは?
タイトルは?
ビジュアルメイン? それとも読み物?
装丁は?
本文の色数は? カラー? モノクロ?
ページ数は?
冒頭でお聞きした、上記の質問に答えられるようになるということです。
実をいうと、これらの質問は編集者が作る書籍企画書の項目とリンクしています。
さきほど例に挙げた「片づけ」がテーマの3つの書籍企画案。それぞれ企画書(の一部)の文面がどうなるか見ていきましょう。
【企画1】
タイトル:片づけで『自分でできる』子を育てる(仮)
ジャンル:子育て
判型:四六判
製本:並製
色数:2色(もしくはモノクロ)イラストあり
ページ数:208ページ【企画2】
タイトル:片づけで人生を幸せにする教科書(仮)
ジャンル:自己啓発
判型:四六判
製本:並製
色数:モノクロ
ページ数:224ページ【企画3】
タイトル:無印良品ですっきり片づいた暮らし
ジャンル:インテリア
判型:A5判
製本:並製
色数:4色
ページ数:112ページ
いかがでしょうか?
自分の未来の本が「書店の棚のどこに置かれるか」を考えると、これだけ本の「モノとしてのイメージ」が鮮明になってくるのです。
類書の「売れている本」からヒントをもらう
「書店で置かれる棚が決まると、本の体裁が決まる」とお伝えしましたが、実はもうひとつ重要なことが決まります。
それは「類書」。つまり、あなたの本の「ライバル」が決まるということです。
同じ棚にあってすでに売れている本は、本を作る際の指針になります。
なぜその本が売れているのかを分析したうえで、「プラスの要素をうまく取り入れる」。つまり、その本に寄せていく部分を見極める。
とはいえ、類書とあまりにも似てしまうと、いわゆる二番煎じになってしまい、読者があなたの本を買う意味がなくなってしまいます。
そのため、売れている本と「コンセプトや切り口、見せ方をどう変えるかを考える」。つまり、その本と違う部分を作り出す。
本を作るにあたり、この2つがとってもとっても大切です。
1. 売れている本に寄せる部分
2. 売れている本と変える部分
売れる本を作るためには、1と2、どちらの要素も必要です。
2の「売れている本と変える部分」を見つけて盛り込むのは大切ではありますが、気をつけなければならないのは奇をてらい過ぎると逆効果だということ。
このあたりのさじ加減が本当に難しい。
だからこそ、本作りは楽しいんですけどね。うふふ。
そうそう、この本を作る際の指針となる「類書」。編集者が作る書籍企画書にも「類書」の項目は出てきます。
書籍企画書を仕上げるプロセスと同じ
さて、ここまで本を出したい人が「コンテンツ力を高めるためにできること」を長々と書いてきたわけですが、つまりは何をお伝えしてきたかというと、
書籍企画書の書き方を一生懸命お伝えしてきたわけです。
つまり、本を出したい人が「コンテンツ力を高めるためにできること」とは、「書籍企画書を作れるようになること」とほぼイコールなのです。
自分の本がどんな企画で、どんな体裁で、ライバルはどの本なのか。ライバルとは違うこの本の強みは何なのか。
それを見極めることによって、企画の精度がどんどん上がっていきます。そして、あなたの本のイメージの解像度がどんどん上がっていきます。
同時に「今の自分のコンテンツに足りない部分」も見えてくるはずです。「自分の強み」も見えてきます。それらをキュッキュと磨いていきましょう。
フォロワー1万人で、ネット上に魅力的なコンテンツを常に提供していて、精度の高いプラチナ企画書を持っている人。
そんな人をなまはげ編集者が放っておくでしょうか。
ここまで読んでくださったあなたなら、きっとすぐに答えられると思います。
さて、次回は「商業出版とKindle出版、どっちがいいの?」というテーマでお届けしたいと思います。お楽しみに!