目的がわからない文章は混乱を招く
子どもたちの通う学校では、年に1回、クラスの合奏を披露するコンサートがあります。
コロナ禍以降、録画した映像をオンラインで流す方式に変更になりました。今日はその録画を行う日。
先週末、Google Classroom(オンライン化が進んでいて、お知らせはペーパーレス)にアップされた時間割表に、「コンサート録画時の服装の注意事項」として先生のコメントが添えてありました。
「アコーディオンパートの女子はズボン着用でお願いします」
まさにわが娘は「アコーディオンパートの女子」。しかし、この一文を読んだ私は、何となく腑に落ちない感覚を覚えました。「なぜズボンを着用しなければならないのか?」がわからなかったからです。
目的がわからない文章の弊害
察しのいい方は一瞬で先生の意図を理解すると思うのですが、察しの悪い私は「ふーん、ズボンね。なんでだろ?」と思いながら、クラスだよりとしてアップされている別のデータを開きました。
そこに掲載されていたコンサートの練習風景の写真を見て、やっと「ああ、そういうことか!」と先ほどの一文の意味を理解しました。アコーディオンを演奏する子どもたちは、最前列で椅子に座って演奏していたのです。
「スカートだとパンツが見えちゃうってことか!」(歯に衣着せぬ言い方で申し訳ない)
先生の意図を理解したうえで、編集者として仕事をしている私はこう思いました。
「それならクラスだよりのほうに書いてくれればいいのに!」
おそらく、先生は全クラスの保護者に向けて「パンツが見えちゃうからズボンをはいてきてね」とは書きにくかったのでしょう。その気持ちは理解できます。
そうであれば、せめて「目的をわかりやすくしておく」(練習風景の写真と服装の連絡を併記する、最前列で椅子に座ると明記する)配慮はあっても良かったのではないでしょうか。
今回の件はあくまで一例ですが、相手に「こう行動してほしい」という文章に「目的」がはっきり書かれていないと、読み手を混乱させてしまう可能性があります。
それだけでなく、「行動の押しつけ」をしてしまう恐れもあります。
相手に考える権利を与えず、「とにかくやっておいてよ」と行動を押しつける(とにかくズボンをはいてきて!)、もしくは「目的は察してよ」と「物分かりの良さ」を押しつける(パンツ見え防止ってわかるよね?)のと同じ。
上司が目的を伝えずに、部下に仕事を押しつける場面をイメージするとわかりやすいかもしれません。
というか、今回の場合はそもそも該当者が少ない(2人か3人)のだから、先生から直接生徒に伝えれば良かったのでは?と思うわけです。
目的がわからないと取った行動が正しいのか迷う
今朝のことです。娘がズボンをはかなければいけないことをすっかり忘れていた私(週末はさむと忘れちゃうよね〜←単なる言い訳)。
スクールバスの集合場所まで子どもたちと歩いているとき、ふとコンサートの話になりました。ハッとして娘の服装に目をやると……なんとキュロットをはいている。
私「あれ、今日ってズボンじゃないといけないんじゃなかったっけ?」
娘「え、これズボンでしょ? スカートじゃなければいいんじゃないの?」
私「……!?」
ここで私の頭は再度混乱しました。↓頭の中を解説。
「キュロットはズボンなのか??」
「パンツは見えないけど、太ももは見えてもいいのか????」
娘は一瞬、家に戻ってズボンに着替える素振りを見せましたが、バスに乗り遅れる可能性があったので「きっと大丈夫」と根拠のないなだめ方をして、結局キュロットのまま登校しました。
うっかり母さんのよくある失敗話ですが、これは「目的がない文章」の二次被害ともいえます(こじつけ?)。
そもそもズボンをはく目的が「パンツが見えないように」なのか「パンツ&太ももが見えないように」なのか、書いてないから判断できない。
「キュロットはギリギリセーフなのか?」が判断できないわけです。先生が意図する「目的」を達成しているのか、していないのかわからない。
もうここまで来ると笑い話ですよね(笑)。でも、案外これに似たことって起こりがちなのではないでしょうか。
コロナ禍で、仕事を進めるうえでのテキストコミュニケーションの重要性が増しています。文章で「相手にわかりやすく意図を伝え、動いてもらう」機会ってすごく増えましたよね。
その際、目的がはっきり書かれていない文章は、相手を混乱させる可能性があるのです。
このことは、胸に留めておく必要がありそうです。
子どもたちを送りだし、家に戻ってから夫に事の顛末を切々と語ったのですが、彼はキーボードを叩きながら「うーん、言いたいことはわかるけど、もっとほかに大切なことがあるんじゃない?」とのたまったので、やりきれない思いをここに吐き出してみました。
キュロット姿の娘を見て、先生はどんなリアクションをしたのでしょうか?
娘が帰ってきたら様子を聞いてみようと思います。