「子どもの宿題を見るのが苦行!」という方におすすめの一冊
公認心理師であり、不登校・発達障害の子どもたちの個別指導塾「きらぼし学舎」を運営している公認心理師の植木希恵さん(以降、きえさん)さんの著書が2023年7月27日(木)に発売されました。
発売するまでの数カ月、編集担当としてきえさんと一緒に走り抜けてきました。
途中「ま……間に合うのか!?」とハラハラする時期もありましたが、きえさんの鬼のような執筆スピード、制作チームの皆さんのご尽力により(本はいろいろな方の力を結集して生み出される)、無事発売までたどり着きました!
20年以上、発達障害・不登校のお子さんと一人ひとり対峙しながら「こうしたらうまくいく」を見つけてきたきえさん。
その豊富な知識・経験をもとに、発達障害がある・学習に何らかの困難があるお子さんを、おうちで学習サポートする際の具体的なコツをまとめた一冊です。
お子さんが発達障害の診断を受けている方はもちろん、
「子どもの宿題を見ると、お互いイライラしてケンカになるのがイヤ!!」
「もうすぐやってくる夏休みの宿題、恐怖でしかない……」
という全小学生保護者の皆さんに、ぜひとも読んでいただきたいと思っています。
誰もが何かしらの「難しさ」を持っている
きえさんと本づくりをスタートして、はじめに衝撃を受けたのが、「発達障害のあり・なしで対応を区別していない」というきえさんのお考えを聞いたときでした。
その理由を、きえさんは本の中でこう書いています。
私の教室に来ている子どもたちの中には、発達障害と診断された子もいれば、診断されてはいないけれど学習の難しさを抱えている子(いわゆるグレーゾーンと呼ばれる子)もいます。通常学級に在籍している子もいれば、特別支援学級に在籍している子もいます。
どの子に対しても、学習サポートをするときの姿勢は基本的に一緒です。発達障害のある子がわかる・できる方法をとっていれば、どんな子どもにとってもわかりやすく、快適であると考えているからです。
『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』より
そして、きえさんはこう続けます。
むしろ、今まで学校や家庭でされていた子どもへの伝え方・教え方のほとんどが、非常に不親切でわかりにくいものだったといえるのではないでしょうか。
『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』より
「………………!!!!」(←受けた衝撃の大きさを表現)
個人的にこのお考えを聞いて非常に衝撃を受けました。同時にすごーーく納得もしたんですよね。
私自身子育てをしていて、そして子どもの学習サポートをする場面で、思うようにいかなかったこと、たくさんあります。
そのとき、私は「できない子どもがダメ」と思っていたのではないだろうか?
もしかしたら、私の伝え方・教え方が雑だったのではないだろうか?
そんな考えに思い至りました(その視点、なかったわーーーー!)。
きえさんは「発達障害によって生じる『難しさ』と同じ要素をまったくもっていない人はいない」と言います。「全人類、誰もが何かしらの偏りを持っている」と。
ああ、確かにそうだ。
私自身も今まで自分自身の「難しさ」を抱えながら生きてきたし、わが子も「難しさ」にあたる要素を確かに持っている。
本のタイトルに「発達障害&グレーゾーンの」と入っていますが、これは便宜上のもの。
本来そういう区別はないのだから、小学生を育てる全保護者の皆さんに読んでもらいたいです。
もちろん発達障害や、学習に難しさのあるお子さんをお持ちの方にとって参考になることもたくさん書かれています。
特に、
「親子共々勉強に向き合うのは大変なのに、どうしてつらい思いをしてまで勉強させないといけないんだろう」
「将来この子が1人で生きていくために、どういうサポートができるだろうか?」
という思いを抱えている方にこそ、ぜひとも読んでいただきたいと思っています。
夏休みなど長期休みの心強い味方
お子さんが小学生になると毎日宿題が出ますし、公文や塾に通っている場合は、そこでも宿題が出ますよね。
子どもが自分でしっかり計画的に進めてくれれば問題ありませんが、そんな聞き分けのいい子どもなんて、ほぼいないのではないでしょうか。
何らかの親のサポートが必要になる場合がほとんどです。
特に、これからやってくる夏休みの自由研究や読書感想文などの「大物系宿題」はなかなか手強い。
なぜなら、テーマを決め、いくつかの工程に分け、計画的に進める必要があるから。
毎日の宿題のようないわゆる「タスク」ではなく、「プロジェクト」なんですよね。
特に夏休みの宿題が親子共々毎年悩みの種……という方もいらっしゃるはず(はい、もちろん私もその1人です)。
この本は、毎日の宿題のお悩みへの対応策、漢字ドリル、文章題プリントなどの宿題別の学習サポートのコツはもちろん、夏休みなどの長期休みの宿題をどうやって計画を立てて進めればいいか?までしっかり網羅されています。
この本を参考にして、夏休みを楽しく、笑顔で過ごせる家族が増えることを願っています。
軽やかな見た目だけど、ある種の「すごみ」がある本
今回の出版社さん(主婦の友社)はもともと雑誌をメインに扱っていて、実用系で発展してきた会社。
企画段階から、内容としてもビジュアル的にも「すぐできる」「わかりやすい」「取っつきやすい」ものを求められていると感じました。
私自身、もともと実用系の雑誌編集からスタートしているので、理解できる部分もあります。
しかし、超具体的なアドバイスは、すぐできるからこそ機能しないケースも多々あります。
試しにやってみたところで、それがうまく機能しなかった場合、「あ、これは役に立たないわ(ポーイ!)」とされて終わってしまう危険性もあります。
具体性が高まれば高まるほど、当たる的も小さくなる。
深みを出すのが難しく、どうしても「浅くて小さな点」の集積になってしまう。
しかし、きえさんのお考えを聞いていると、そしてきえさんの原稿を読んでいると、実用的で役立つコツの根底に流れている「もっと大きなもの」の存在を感じるのです。
これを伝えなければ……ていうか伝わる本にしなければ!(編集者魂)
いろいろと試行錯誤しましたが、超具体的なコツが書いてあるのはもちろん、その奥にある学習サポートの真髄、「なんで勉強しなくちゃいけないの?」という問いへの解、何なら子育ての真髄まで書かれている本に仕上がった(まだ制作中ですが)と思っています。
「役に立たなかった(ポーイ!)」ではなく、この本の根底に流れている「大きなもの(抽象的)」を基にして、
「自分には、自分の子どもにはどういうやり方がうまくいくか?」
を考え、いろいろな施策を新たに生み出せる、そんな本。
さらっと読もうと思えば読めてしまうし、読んですぐ実行できることもある。同時に、簡単にはできないこと、人生をかけて取り組むようなことも書いてある。
正直「めっちゃ濃い!」です。濃縮果汁を還元していない原液です。
かわいいイラストが盛りだくさんで(心がほっこりする素敵なイラストなんです!)、パッと見は取っつきやすい印象だと思います。
しかし、この本が持っている一種の「すごみ」のようなものを少しでも感じてくださる方がいたら、本づくりに携わった者としてうれしい限りです。
つまり、きえさん自身が軽やかでとても親しみやすい方でありながら、一種の「すごみ」を持っている方ということですね。
読んでくださった方は、ぜひアマゾンのレビューを書いていただけるとうれしいです!